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2008年3月13日 (木)

私しか知らないお話

60年以上も前のお話である。私が旧制中学二年生の今頃であったと思う。勤労動員で(勉強は全くしていない)日々を過ごしていたある日の午後、今日は慰問団が来るからと言われ,引率されてかなりの距離を歩いて或る学校の講堂に集まり板張りの床に腰を下ろして待った。

間もなく開演、少し挨拶があった様に思う。
今にして思えば、はじめは狂言「太郎冠者」(たろうかじゃ)であった。狂言装束、縞熨斗目、肩衣、狂言袴、腰帯を着け独特の声で掛け合いを演じた。「たろうかじゃ」の名前は決して忘れることはない。

次に又今思えば、元○○歌劇団だったと思われる若い女性達が戦中の目立たない衣装で横一列に並んで「花」を歌った。

春のうららの 隅田川 のぼりくだりの 船人が 櫂(かい)のしづくも
 花と散る ながめを何に たとふべき

見ずやあけぼの 露浴びて われにもの言ふ 櫻木を 見ずや夕ぐれ 
手をのべて われさしまねく 青柳(あおやぎ)を

錦おりなす 長堤(ちううてい)に くるればのぼる おぼろ月 
 げに一刻も 千金の ながめを何に たとふべき

かなり時が経ってから、分かったことであるが、「花」は滝廉太郎作曲の歌曲集「四季」の第一曲であった。
お菓子などない、日々の食事さえもままならない配給の時代、連日の様に空襲警報の鳴り騒ぐ日々の間に聞いたこの曲、身に浸みついていて消えることはない。

歌の後、質問が出された。“こいのぼり、雌鯉と雄鯉のどちらをうえに揚げますか?”
直ぐに或る先生が答えた“こいに上下なし”“正解”。変なものをいつまでも覚えているものである。

明日は上弦のおぼろ月、しずかに「花」でも口ずさもうか。来週は彼岸の入りを迎える。

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